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「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」、カーボンリサイクルメタンが船舶のゼロエミッション燃料になりうることを確認

株式会社新来島サノヤス造船

~メタネーション技術によるゼロエミッションを目指した取り組みが学会誌に掲載~

 「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」(WG=ワーキンググループ、以下「本WG」)は、メタネーション技術(註1)によって製造されたカーボンリサイクルメタンが、船舶のゼロエミッション燃料となりうることを確認しました。本WGで行った計算手順と評価の詳細を記した技術論文が日本マリンエンジニアリング学会誌の最新号に掲載されました。

 カーボンニュートラル社会実現への道筋の一つとして、排出されたCO2を回収・再利用するカーボンリサイクルの重要性が高まっています。本WGは、メタネーション技術を船舶のゼロエミッション燃料(註2)に活用する構想の実現可能性を探ることを目的として、CCR研究会(註3)に設置され、2020年7月に9社による活動を開始しました。本WGの活動においては、カーボンリサイクルメタンがゼロエミッション燃料となりうることが大前提であることから、第一の課題として、その可能性評価に取り組みました。

 国際海事機関(IMO)では、カーボンリサイクルメタンの船上での燃料燃焼(Tank to Propeller)による排出量算定ルールが未整備である一方、燃料供給プロセス(Well to Tank)におけるCO2排出への配慮の重要性が指摘されています。本WGでは、カーボンリサイクルメタン燃料の供給に関わるサプライチェーンとして、①CO2分離・回収、②CO2輸送、③メタネーション燃料合成、④メタネーション燃料液化の4プロセスを想定し、評価(註4)を行いました。その結果、メタネーションによるカーボンリサイクルメタン燃料の単位熱量当たりCO2排出量は、約27-gCO2/MJとなりました(Well to Propellerに相当)。

 この数値は、一般にゼロエミッション燃料として認識されている他の代替燃料候補と比較して遜色ない水準であり、カーボンリサイクルメタンがゼロエミッション燃料になりうることが確認されました。また、分離回収技術の効率改善や再生可能エネルギー由来の電力利用などで、約20-gCO2/MJまで削減することが見込まれます。なお、今回実施した可能性評価に関わる計算手順と評価の詳細を記した技術論文が「日本マリンエンジニアリング学会誌56巻4号」に掲載されました。

 本WGは今後、カーボンリサイクルメタンの船舶燃料としての実現可能性をさらに検証するため、大型輸送船によるCO2の輸送、再生可能エネルギー由来水素の供給、メタンスリップ(註5)の防止、液化したメタネーション燃料の供給インフラ、および経済性といった課題への取り組みを進めていきます。

 新来島サノヤス造船は、カーボンリサイクルメタンの供給に関わるサプライチェーンの内、CO2輸送プロセスについて検討を行いました。当社は今後も本構想の課題に取り組み、国際社会の一員としてSDGs(国連サミットで採択された2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)の達成に貢献できるよう、努めてまいります。

当社の地球環境への取り組みはこちらをご覧ください。

以上

 

(註1) メタネーションとは、触媒を充填した反応容器内で水素とCO2を反応させ、天然ガスの主成分であるメタンを合成する技術である。産業施設などから排出され、分離・回収したCO2を利用する。合成されたメタンを燃焼させる際に発生するCO2は、分離・回収したCO2と相殺されると考えられるため、将来的に再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解することによって生成した水素を利用すれば、CO2の排出を大幅に削減したとみなすことができる。

(註2) 国際海運におけるGHG(=温室効果ガス)排出対策を検討している国際海事機関(IMO)では2018年4月にGHG初期削減戦略を採択し、2030年までにCO2の排出量を効率ベースで2008年比40%削減、2050年までにGHG排出の総量を2008年比で半減、および今世紀中のなるべく早期に国際海運からのGHG排出をゼロとするという目標が設定された。メタネーションによるカーボンリサイクルメタンはゼロエミッションを実現する技術となりうるとして注目されている。

(註3) CCR(Carbon Capture & Reuse)研究会は産業界から排出されるCO2を再生可能エネルギー由来水素と組み合わせ、合成メタン等の代替エネルギーを提供することで、化石燃料の使用量削減に実効的なカーボンニュートラルの対策を提案するとともに、2050年に向けた新たなエネルギー供給システム構築に寄与することを目指し、設立された。
https://ccr-tech.org/

(註4) 今回想定したサプライチェーンは複数国にわたるため、排出したCO2について、外航海運を含めてどの国の発生量としてカウントするかという問題が発生するが、国際的な枠組みや合意が形成されていないため、現時点では未定である。

(註5) 燃料として主機に投入されたメタンのうち、燃焼せずに排気されるメタンを指す。メタンはGHGであり、CO2の約25倍の温室効果がある。

 

「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」参加9社の役割

 

参加社詳細(50音順)

株式会社エックス都市研究所 代表取締役:
内藤 弘
本社:東京都豊島区
JFEスチール株式会社 代表取締役社長:
北野 嘉久
本社:東京都千代田区
株式会社商船三井
(本WG幹事会社)
代表取締役社長:
橋本 剛
本社:東京都港区
株式会社新来島サノヤス造船 代表取締役社長:
森本 洋二
本社:岡山県倉敷市
日揮グローバル株式会社 代表取締役社長執行役員:
山﨑 裕
本社:神奈川県横浜市
一般財団法人日本海事協会
(本WG事務局)
代表理事会長:
坂下 広朗
本部:東京都千代田区
日本シップヤード株式会社 代表取締役社長:
前田 明徳
本社:東京都千代田区
日本製鉄株式会社 代表取締役社長:
橋本 英二
本社:東京都千代田区
日立造船株式会社 代表取締役取締役社長兼COO:
三野 禎男
本社:大阪府大阪市

 

本件に関わるメディアお問い合わせ先:

株式会社エックス都市研究所 サステイナビリティ・デザイン事業本部地域エネルギー戦略チーム(担当:河野) 03-5956-7503
kohno@exri.co.jp
JFEスチール株式会社 総務部広報室 03-3597-3166
株式会社商船三井 コーポレートコミュニケーション部 メディア広報チーム 03-3587-7015 mrtmo@molgroup.com
株式会社新来島サノヤス造船 技術設計本部 基本設計部 086-475-1559
miz-sdi2@sanoyas.skdy.co.jp
日揮グローバル株式会社 日揮ホールディングス株式会社 グループ経営推進部 コーポレートコミュニケーショングループ 045-682-8026

 

一般財団法人日本海事協会 広報室 03-5226-2047
eod@classnk.or.jp
日本シップヤード株式会社 管理部総務グループ 045-212-8205
info@nsyc.co.jp
日本製鉄株式会社 総務部広報センター 03-6867-2977
日立造船株式会社 企画管理本部 経営企画部 広報・IRグループ 06-6569-0005