Sanoyas

技術開発

まごころこめて、地球にやさしい取り組みを

地球温暖化の大きな要因の一つは、温室効果ガス(GHG)の排出です。GHGの排出を全体としてゼロにする※1「カーボンニュートラル」の達成が昨今の重要な課題となっています。

多くの船舶が世界中で航行している国際海運の分野でも、国際海事機関(IMO)を中心にGHG排出ゼロに向かって計画的な取り組みが展開されています。

(*1) 二酸化炭素をはじめとするGHGの排出量と、森林などによる吸収量が等しくなり、GHG排出が実質ゼロとなる状態を意味する。

当社では、地球環境負荷低減に寄与する船舶の開発・建造を通して国際社会に貢献すべく、様々な技術開発を進めています。これらの技術開発は、船舶による輸送を通じてCO2の「排出削減」・「有効利用」・「地下貯留」を可能とするための重要な取り組みです。

CO2削減への取り組み

CO2の排出削減

船舶からのCO2排出を削減するため、より燃費の良い船舶の開発や、重油よりもCO2排出量が少ない代替燃料の船舶への活用が重要な課題となっています。それらの課題に対する当社の4つの取り組みを紹介します。

① シミュレーション技術による省エネ船型・省エネ付加物の開発

船舶の燃費性能向上のために、当社ではシミュレーション技術を用いて最適な船型や省エネ装置の開発を行っています。数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)と呼ばれる数値計算モデルを使ったコンピュータによる数値計算・シミュレーションを用いることで、船型や省エネ付加物の省エネ効果を推定することが出来ます。さらに水槽試験とCFDとの結果を比較することで、シミュレーションの精度向上に向けたフィードバックが可能となります。

当社がCFDを用いて設計/効果を確認している省エネ装置を紹介します。

省エネ装置 省エネ装置2

“STF (Sanoyas Tandem Fin)“STF (Sanoyas Tandem Fin)”は、2006年5月に特許を取得した船舶の省エネフィン装置です。単板構造のフィンを、プロペラ前方の船体外板に個別に2~3枚配置した非常にシンプルな船舶の省エネ装置で、船体抵抗の減少と推進効率の向上に寄与します。

“ACE DUCT (Sanoyas Advanced flow Controlling and Energy saving DUCT)”は、2017年11月に特許を取得した船舶の省エネダクト装置です。一般的なダクトよりも比較的低い位置に設置し、水平ストラット形状を工夫することでプロペラの水流を整えます。これによりプロペラキャビテーションリスクを下げ、推進効率の向上を達成することが可能となりました。

当社独自に開発した“STF”や “ACE DUCT”、舵付加物等を組み合わせて装備することで、約8%の燃費低減を達成することが可能となります。

近年、GHG排出削減等の環境規制強化を背景に、船舶の省エネ化は一層レベルの高いものが要求される時代となっています。

省エネ技術の分野における競争力を強化するため、今後も研究開発に注力していきます。

② 実海域性能評価

船は波や風などの影響を受ける海上(実海域)を走っており、実海域において燃費を向上させることが重要です。当社は実海域における船の性能を把握し、実海域で低燃費な船の開発のため、次のような取り組みをしています。

波を受けながら航行する船舶

波を受けながら航行する船舶

1)実海域実船性能評価プロジェクトへの参画

波や風などの影響を受ける船舶が実際に運航する海域の中での船舶の速力、燃料消費量等の性能(実海域性能)を正確に評価する方法を開発することを目的として、海運・造船・舶用メーカーなど25社が参加し、2017年度から活動を行っており、当社も参加しています。

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所WEBサイト

2)デジタライゼーション

デジタル技術の変革スピードが加速していくなか、当社でもビッグデータの活用を推進しています。船舶自動識別装置(AIS)などの船舶の動静データを分析し、新規開発船の開発に活用するほか、最新の開発船にモニタリング装置を搭載し、船舶の運航・推進性能に関わるデータを蓄積しています。これらを解析することで実海域性能の把握に努めるだけでなく、船型開発へフィードバックし、性能および品質の更なる向上を図っています。ビッグデータの活用には様々な可能性があると考えており、今後も適用領域を拡大していきます。

航路
航路
馬力カーブ
馬力カーブ
水槽試験
水槽試験

当社建造のバルクキャリアにて実海域での運航データ流通基盤(IoS-OP)をフル活用

Ios-OP コンソーシアム WEBサイト

③ LNG燃料の木材チップ船を開発

CO2排出を削減できる代替燃料の一つが、液化天然ガス(LNG)です。当社はLNGを燃料とする430万キュービックフィート型木材チップ運搬船のコンセプトデザインを完成させ、そのデザインに対して、一般財団法人日本海事協会(ClassNK)から概念設計承認(AiP)を取得しています。 本船は、エネルギー効率設計指標(EEDI)にて40%以上の改善を可能としており、GHG削減戦略の2050年目標である「総排出量50%削減」の達成へ貢献することのできるデザインであると考えています。

LNG燃料木材チップ船の概念設計承認(AiP)を取得
LNG燃料木材チップ船の概念設計承認(AiP)を取得

④ 燃料ガス供給システム(FGSS)を開発・製造

LPGタンクで長年にわたり積み上げた豊富な経験と幅広い実績を活かし、LNG燃料船に搭載するFGSSの開発に取り組んできました。既に各船級(NKおよびABS)から概念設計承認(AiP)を取得し、初号機を製造、納入しております。FGSSは船種により多様化するニーズに合わせ大きく発展していくと期待されます。今後も低炭素社会実現に向けた課題解決に積極的な役割を果たすべく、引き続き製品開発に努めていきます。

船級よりAiPを取得
船級よりAiPを取得

船級よりAiPを取得

FGSSイメージ

FGSSイメージ

納入したLNG貯留タンク

納入したLNG貯留タンク

甲板上に搭載されたFGSS

甲板上に搭載されたFGSS

CO2の有効利用

大気中のCO2を増やさない為に、工場等から排出されるCO2を有効利用するという考え方があります。当社はこのCO2の有効利用の実現に向けて、船舶による輸送という面から貢献して参ります。

⑤ CCR(Carbon Capture & Reuse)研究会および船舶カーボンリサイクルワーキンググループへの参加

工場から排出されるCO2を回収し、それを水素と反応させることで合成メタン燃料を生成することができます。この合成メタン燃料を使用すれば、実質CO2の排出はゼロとなると考えられます。しかし、燃料製造過程におけるCO2排出の削減や、実用化に向けた経済性等、課題は多く存在します。このような課題の解決に貢献すべく、当社はCCR研究会および船舶カーボンリサイクルワーキンググループに参加し、CO2の船舶輸送に関して検討を行っております。

「CCR 研究会船舶カーボンリサイクル WG」が9社で始動

「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」、カーボンリサイクルメタンが船舶のゼロエミッション燃料になりうることを確認

CCR 研究会 WEBサイト

CO2の地下貯留

工場等から排出されるCO2を回収し、地下へ貯留すれば大気中のCO2の増加を抑えることができます。この考え方や技術をCCS(Carbon Capture and Storage) と言います。当社はCO2輸送を通じてCCSの実現に寄与して参ります。

⑥ CO2輸送船・圧入船の開発

CCS技術において、海底へ貯留する場合は、液化CO2を輸送し海底へ圧入する必要があります。

当社は環境省公募による「環境配慮型CCS実証事業」における委託業務の一環で、世界初「CO2輸送船(圧入船Ready)」のAiPをClassNKより取得致しました。本船型は液化CO2タンクに加え、海底へCO2を圧入するシステムのためのスペースを確保しており、将来的な圧入船への転用も見据えたデザインとなっております。当社は将来的なCO2輸送需要に応えられるよう、液化CO2運搬船に関してさらなる研究を続けていきます。

CO2輸送船圧入船 Ready

[CO2輸送船圧入船 Ready]

CO2圧入船

[CO2圧入船]

「液化 CO2 輸送船(圧入船 Ready)」AiPを取得